距離減衰式 議論のテーマ

河角(1954)、坪井(1954

距離減衰式の最初の研究 Kanai (1957)

距離減衰式の基本: 地震動振幅が震源からの距離が遠くなるほど小さく、マグニチュードが大きくなるほど、また地盤が軟らかくなるほど大きくなる。

物理的特性を反映した距離減衰式を導く方向性

目的変数: PGAPGVPGDSa、エネルギースペクトル、震度、スペクトルインテンシティー(SI)

説明変数: マグニチュード、距離、地盤種別・平均S波速度

マグニチュード: 気象庁マグニチュードMj5s, MLのクローン)、ローカルマグニチュードML (Richter 南カリフォルニア )、表面波マグニチュードMs (20s 浅い地震) , 実体波マグニチュードMb (1s 深い地震)、モーメントマグニチュードMw(Moとの対応)

距離:震源距離(X)、震央距離(⊿、震源に近づくにつれ⊿→0となり振幅が飽和する効果を防ぐために⊿+Hを用いることも多い、H30km前後)、断層距離、断層面を微小面積に分割し各分割面を点震源と仮定する、等価震源距離

サイト:サイトごとに地盤定数cを決定する方法、地盤を表層S波速度で分類する、

震源深さ:遠方では震源深さが深くなるほど最大加速度は大きくなる、震源深さの依存性は1秒以上の周期では影響が少ない、深い震源ではストレスドロップが高いこと、太平洋プレート内のhigh-Qゾーンを地震波が伝わるから

震源メカニズム:断層滑りの型(逆断層>横ずれ断層>正断層)、ラディエーションパターン(短周期で方位依存性が小さい、長周期でなければ無視できる)、破壊伝搬の方向(ディレクティビティ、経験式への補正係数の検討がある程度)、長周期パルス波(アスペリティサイズ、Mwの依存性、断層が地表に到達する場合しない場合)

地域性:high-Qlow-Qゾーンの影響(やや深発地震が太平洋側で過小評価、日本海側で過大評価になりかねない)など

データ:回帰分析の際のデータの偏り(マグニチュードと距離の強い相関関係、トリガー式の観測システムの場合は距離減衰式の回帰係数が小さくなる、トリガーがひかれなかったサイトのある距離からはデータに含めない方が良い、10cm/s^2くらいにすればよい)

回帰モデル:マグニチュードに関するスケーリング(Mの一次式ではコーナー周波数による震源スペクトルの非線形性を考慮できない、よってM^2の項を導入する必要がある、係数は‐で上に凸のモデルとなる、スケーリング則とはMが増加した時の振幅の増加量を表し、一次式なら係数、二次式であればMを偏微分したものとなる)

遠方における距離減衰モデル:幾何減衰(-n*logX 一様無限媒質で1、一様半無限媒質で1/2)、粘性減衰(-b*Xbは伝播経路Qの関数となる)

近距離の距離減衰モデル:震源域における短周期地震動の飽和(地盤の非線形性や位相の相殺→振幅が震源近くで飽和する条件を付ける、断層面を小領域に分割する、等価震源距離)

回帰方法:重回帰分析の問題点→二重回帰分析、最尤法

近年における距離減衰式

内山泰生、翠川三郎:震源深さの影響を考慮した工学的基盤における応答スペクトルの距離減衰式

応答スペクトル、工学的基盤におけるスペクトルを評価、震源深さを考慮した(幾何減衰として震源深さ30km以上の地震に与えた)

大野晋・高橋克也、源栄正人:カリフォルニア強震記録に基づく水平動・上下動の距離減衰式と日本の内陸地震への適用

安中正・山崎文雄・片平冬樹:気象庁87型強震記録を用いた最大地動および応答スペクトル推定式の提案

司・翠川:断層タイプ及び地盤特性を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式

翠川・大竹:震源深さによる距離減衰特性の違いを考慮した地震動最大加速度・最大速度の距離減衰式