大きな流れ
歴史地震資料に基づいて地震動強さを順序統計量として解析するもの(地域係数等の地震荷重を設定する上での資料)
地震活動の確率モデルを取り入れた方法(Cornellの手法)
低頻度・巨大災害の解釈と対処、強震動予測手法の発展(兵庫県南部地震の被害)
黎明期の研究
累積頻度による分布
河角(1951):累積頻度分布による推定を用いている。この場合、統計年数をTp、再現期間をtとすれば、累積頻度t/Tpに対応する分位点から再現期待値を求める。この方法で安定した再現期待値を求めるためには少なくともTpがtの数倍以上あることが必要。本研究では統計年数がおよそ20年弱になるため、この結果を再現期間50年のハザード評価に用いる障害を考える必要がある。河角の研究においては歴史地震の結果が時代、地域によって必ずしも均質に得られてはおらず、この障害をできるだけ小さくする工夫がある。地域係数をはじめとする設計の地震荷重の設定の基礎資料として利用された。
極値分布への当てはめによる推定
最大値を考える際には極値分布から再現期待値を推定するほうが最大値の特性をよく表せる場合が多い。
地震発生の確率モデルによる推定
Cornell(1968):Engineering Seismic Hazard
時間的分布はポアソン分布、規模的分布は指数分布、空間分布は一様分布、地震動指標には距離減衰式を用いる。
1970~1980年代の日本においては各設計基準が大きく改訂される時期で、ここの地点を評価するというよりは日本全体を概観するような研究が多くみられた。
1981年新耐震に向けて、これまでの提案されたハザードマップを比較検討するような研究がすすめられた(尾崎ほか)
非定常なモデルへ
活断層→固有マグニチュードと平均活動期間
プレート境界→固有マグニチュードと平均活動期間
バックグラウンド地震→グーテンベルグリヒター、BPTモデル、定常ポアソン
ハザード評価結果をより多様な観点から解釈することを意図した研究
亀田・石川(1988):ハザード適合マグニチュード・震央距離による地震危険度解析の拡張
単一の地震動強さのみの取扱いを拡張して複数のパラメータの同時評価法を目指した。
石川・亀田(1990):地震危険度解析に基づく想定地震の選定法 確率論的地震ハザード評価に基づいてシナリオ地震を選定しようという試み
Robin. K. Mcguire :Probabilistic seismic hazard analysis and design earthquakes: Closing the loop deaggregationの概念、確率論的想定地震
その後の複数指標を用いたPSHAの高度化
P.Bazzuro and C.A.Cornell:vector-valued probabilistic seismic hazard analysis (VPSHA)
高田・下村:経時特性を考慮した確率論的地震ハザード評価に関する研究
林・福島・矢代:最大加速度と最大速度を地震動指標に用いた確率論的地震ハザード評価
兵庫県南部地震(1995)
低頻度巨大災害の確率論的解釈と今後の対処が必要となった。→耐震設計や地域防災計画に際して、地震発生確率がきわめて低い活断層については発生頻度の問題ではなく、地震の発生を前提とした地震動評価をすべきという、想定地震の考え方が強く評価されるようになった(強震動予測技術の向上、これを用いた神戸付近の強震動の再現に成功?)。→しかしいつ発生するかも分からない活断層の活動をすべて想定して耐震設計や地域防災計画を立案することは経済性の面からも疑問。→ 要注意活断層の洗い出し、活断層を考慮したハザード評価の重要性、想定地震による地震動とハザードレベルとの関係の明確化の必要性
地震調査研究推進本部地震調査委員会「基盤的調査観測の対象活断層」全国98活断層の調査
防災科研地震動地図 司・翠川式(PGV)、翠川ら(計測震度)
石川・亀田(1990):確率論的想定地震の概念
平均的な特性から地域特性を考慮し多様性を取り入れた評価へ
Tothong P., Cornell C.A., and Baker J.W., 2007. Explicit directivity-pulse inclusion in probabilistic seismic hazard analysis, Earthquake Spectra, 23 (4), 867-891.
他にも近距離のハザード解析においてはディレクティビティー等を考慮した研究が考えられる。