【まとめ 地震動】理論地震動評価

三次元の均質等方な全無限弾性体における理論地震動
地球を三次元の均質等方線形な全無限弾性体と仮定し、ディスロケーションモデルによって全無限弾性体中の任意の点に生じる動的変位応答すなわち理論地震動を求める式を誘導する。この仮定はかなり大胆だが、このような単純な仮定のもとにおいてはグリーン関数は解析的に簡単な形で求められているために、理論地震動の基本的な特性を理解しやすい。また観測波形の実体波の初めの部分はこれでもよく説明できることが1960年代に示されたことにより、地震学の発展に大きく貢献したという歴史的経緯がある。

せん断食い違い型点震源による理論地震動
断層面積Aの断層面上の各点で同時に同一の食い違いが起こる、すなわち震源時間関数が断層面上の各点において同一で、断層運動を点ξに集約させた点震源を考える。三次元の均質等方線形な全無限弾性体におけるグリーン関数は得られている。これを前章で求めたせん断食い違い型点震源の変位場の式に代入し、解を求める。のとき変位場の式は、近地項、S、P波中間項、S、P波遠地項の5つに分かれ、それぞれにラディエーションパターンが得られる。震源地震関数として傾斜関数(ramp function)を考える。遠地では傾斜関数の時間微分であるボックス関数の形をした短形パルスが得られる。

周波数領域における理論地震動
変位場の式をフーリエ変換し、P、S波項に分離しそれぞれを遠地項、近地項、中間項に分ける。波の波長に対して観測地点までの距離が数倍以下ならば近地項が卓越する。したがって、この条件を満たすωが小さな低周波数(長周期)領域、震源距離が小さな震源近傍では近地項が卓越する。遠地項ではωの大きな高周波数(短周期)領域、震源距離が大きな観測地点では遠地項が卓越する。強震動の研究において遠地S波項のみが考慮されるのはこの理由である。

理論地震動の振幅の方位特性(ラディエーションパターン)

ハスケルモデル
矩形断層の1辺で生じた相対変位が断層の長さ方向に一定の破壊伝搬速度で伝搬するものである。この破壊伝播様式はユニラテラル破壊伝播と呼ばれる。断層パラメータは静的なもの(断層長さL、断層幅W、最終相対変位D)と動的なもの(立ち上がり時間、破壊伝搬速度)の5つになる。