【まとめ 地震動 書きかけ】半経験的地震動評価1

工学的目的としては短周期領域の地震動が欲しいが、このような成分は波動伝播経路の微細な構造に強く影響されることが知られており、理論的な解を求めることが不可能である。過去に発生した中小地震の観測記録を用いて大地震の地震動を評価する手法がHartzellによって提案された。

半経験的地震動評価法の基礎
・大地震と小地震の断層パラメータ間の相似則の仮定
・大地震と小地震の地震モーメント比に基づく重ね合わせ数の決定

断層モデルによる遠方の地震動変位
破壊伝搬速度一定でバイディレクショナルに変位食い違いが伝搬していくことを考える。このとき断層面∑から放出されたS波による遠方場の変位のフーリエ変換は前章の遠方場の理論地震動で求めたものから算出できる。立ち上がり時間をnd個の傾斜関数⊿d(t)に分割する。また大地震の断層面を小領域⊿∑に分割する。このとき断層面∑のフーリエスペクトルは、各小領域⊿∑でのフーリエスペクトルの和であらわされる。

半経験的地震動評価法の基礎式
すべての小領域⊿∑における小地震の観測記録は当然ないため、断層パラメータが分割した小領域の破壊と一致するような小地震を用いて、各小領域のスペクトルを近似的に与えることを考える。考えている小領域の大きさに対して十分に遠方の観測点では、幾何減衰やラディエーションパターンの効果が小領域の内部でほぼ一定となる。観測点でも同様。
単純な断層モデルに基づいて遠方における大地震と小地震の地震動間に成り立つ近似的な関係を導いた。現実の伝播経路はここまで単純ではないが、どんなに複雑だとしても小地震と大地震でほぼ共通であるとしたら、両者の地震間の関係は大まかには断層運動の関係のみで決定されることになる。

断層パラメータの相似則と重ね合わせ数
大地震の地震動を評価するためには重ね合わせ数nL、nW、nDを与える必要がある。一般に小地震の断層パラメータは明らかにされていないことが多いためこれを困難にしている。実地震の断層パラメータ間に成り立つ平均的な関係をもとにして重ね合わせ数が仮定される。
地震モーメント Mo = μ*D0*A
地震モーメントと断層面積の関係 Mo~A^(3/2)
平均的な矩形断層の形 L = 2W
以上から Mo~ L^3 Do ~ L
地震発生前後における断層面上のせん断応力の差⊿σは応力降下量といわれるが、これは食い違い理論から ⊿σ = (const.)μ*D0/√A
上式DoとAの関係を代入すると応力降下量は地震規模に関係ないことがわかる。このように地震発生位置をある程度限ってみると断層パラメータの値には平均的には一定の比例関係にあり、⊿σも地震規模にはよらず一定の値をとることがわかる。
つまり大地震と小地震の断層パラメータ間に相似則を仮定すると
L/⊿L = W/⊿W = D0/⊿D0 = nL = nW = nD = n
nは地震モーメントの比から
n = (Mo(大)/Mo(小))^(1/3)
となる。

地震動評価式のバリエーション

一様な断層破壊に基づく評価式と課題
前節までの方法は一様な断層破壊に基づくという点で、基本的にハスケルモデルと同様に長周期地震動はよく表現できるが、次節に述べるように短周期地震動を過小評価するという性質をもっている。

小地震の重ね合わせ方のバリエーション