限界状態設計法のすすめ

1章 今、なぜ限界状態設計法なのか?
建築基準法第二章第20条
「建築物は、自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧及び水圧ならびに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造でなければならない。・・・・・設計図書の作成に当たっては、構造設計によってその構造が安全であることを確かめなければならない。」
構造物に所定の耐力を与えることだけが構造の目的であると主張する人もいる。構造設計に耐力と関係ないことを持ち込み、それによって建築物の使用を制限すべきではないという考え方。

建築物のさまざまな利用目的とこれに付随する事柄を健全に遂行するために、壁、柱、梁、などの主要構造部部材あるいは壁面や屋根面の仕上げ材とその支持構造部分が備えるべき性能を満足させることである。

許容応力度設計 規定された外力によって与えられる変位が弾性範囲内にとどまることを確認する設計
豊かな建物と作るうえでさびしい、建物全体をシステムとしてみたときに、このシステムの耐力についてはまったく言及されていない。

建物の真の強さ 破壊機構を設定する必要がある。建物の不静定次数が大きくなるほど決定しにくくなる。仮想仕事の原理、節点振り分け法

品質・信頼性の時代 50年間にこの建物の部材応力度が降伏応力度を突破する危険性はどの程度か? 許容応力度設計は漠然としか答えられない。なぜならまず荷重値の頻度がわからない、使用材料の降伏応力度の値が明確でない、降伏応力度と許容応力度の関係はわからない

許容応力度設計法を補う努力
竹山論文 ①構造物の安全率を不均一、不確実にする点において根本的な欠陥 ②荷重と材料の安全率が錯雑して荷重に対する安全性が観念的に極めて把握しにくい ③安全率の分離と構造計算の対象とする荷重を明確にする ④建物の強さを破壊強さと弾性強さの二つに分けて考える ⑤弾性→通常起こり得る程度の荷重 破壊→想定しうる最大の荷重 ⑥弾性強さ→下限品質材の降伏点 破壊強さ→下限品質材の強度
(弾性、破壊→長期、短期)

終局耐力設計法 
1975 年 鋼構造塑性設計指針 もし構造物の破壊する荷重の大きさ(破壊荷重)がわかるのであれば作用荷重の大きさに安全率を見込んだ終局荷重を設定し、終局荷重の下でちょうどその構造物が破壊するように設計することが可能になり、安全の程度が明確になる。
1981年 新耐震設計法 一次設計・二次設計(終局時耐震性能の確認)
規準いっぱいに建てられた建物では、供用期間内で1度程度の割合で許容応力度を突破するということが言える

信頼性設計法
新耐震に対して、信頼性の割合を確率として定量的に与える。

限界状態設計法
構造物の安全性および使用性・居住性を確保するための限界状態を明確にし、これを適切な信頼性の本で達成するための設計法
従来の設計法を集約し、これに安全率の設定の合理性を与えるために信頼性設計の概念を加えたもの
安全性・使用性の余裕の程度の確保の方法で、安全性の余裕の程度を荷重効果に関する余裕と、耐力に関する余裕に分離し、荷重係数、耐力係数によってそれぞれを確保している。この設定に、信頼性の考え方を導入できる。

限界耐力設計法の特徴
①建物の安全性・使用性を確保するための各種の限界状態を明確にし、これを適切なグレードで設計する。
②適切なグレードを確保するために、荷重と材料に関するばらつきを考慮して信頼性という考え方を導入する。